『教養としての』

練習として昨年の現思研報告「歴史としてのジャパニメーション」(2005年5月?)の際に記述したメモ、読書感想をアップしてみます。

第二部・アニメ論――ササキバラ・ゴウ


宮崎駿高畑勲:『ホルス』が開いた新しい時代の扉(東映動画
出崎統ジュブナイルの物語構造(虫プロ
富野由悠季:アニメの思春期(サンライズ
ガイナックス:プロとアマチュアの境界(ガイナックス


補講 石ノ森章太郎(&永井豪):メディアミックスの先駆者


〈読後感想〉
①人間の心理的発達段階(成長)と重ねるかたちで個々の作り手(主に監督)と作品を紹介し、個々の紹介の中で、作品自体のもつ新進・新機軸性、そして作品(アニメ)以外に与えた相互作用、いわゆるメディアミックスの変化まで紹介している。「アニメの外なる物」*1は商業化が高度化するにつれて、次第にアニメ自体に近接してゆき、最終段階(!?)つまりはオタク(ポストモダン)の段階になると受け手は「アニメの外なる物」を消費して作り手を支えるのではなく、「アニメ」作品そのものをまさに消費し、さらに「越えてしまった者たち」は自らアニメを造りだした。

※論述の基調は作り手を代表する監督と作品紹介、そしてそれらが生み出すムーヴメント(消費のされ方、メディア・ミックスのかたち)


②具体的に触れられた対象としては上記の目次どおり、いわば後代の表現に影響を残した者たちをクローズアップした論述。
これらは時系列的に並べられており、それはアニメを支えた有名プロダクションの時代変遷であり、また「技法」あるいは伝え方の変遷、そして受け手(消費者)たちの世代・心性の変遷史として見て取れよう。


③抜けている点は何だろうか?無論、なによりも紙幅の制限があるのだけれど…
タツノコぴえろシンエイ動画東北新社などのその他のプロダクション、およびその作品
・少女アニメとは何だったか?:なぜ上戸彩なのか?
・アニメ誌とは何だったか?
・ヤマト・ムーヴメント(=SFへの誘い):無論、今日に至る重大な「背景」として描かれるが、そのものは触れていない。ここはきっちり補うべき。
・オタク出現以後のアニメ状況(この本は2001年に出版されており、時代上仕方のないことなのだが・・・)


ポスト・エヴァの現象について取り留めなく列挙してみると…
(1)『ほしのこえ』現象(プロダクションは必要か?クリエーターが問われる世界/クリエータを支えるツール=IT機器の発達)
(2)ゲーム世界とのミックス:アルファシステムと「絢爛舞踏祭
(3)インターネットとグローバリゼーション(実は手塚の時代から始まってはいるのだが…ネット・アニメ事情)
(4)作り手としての女性?:女性アニメ・クリエーターは存在するのか?
(5)プロダクション再編(ボンズProduction I.G.)


ほしのこえ [DVD] 絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク 1 [DVD] 絢爛舞踏祭 劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 (通常版) [DVD] 攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG Individual Eleven [DVD]

*1:いわゆる「企画関連商品」の意味で感想を書いていた当時の私が名づけているらしいです。似ても似つかぬ「玩具」は次第に精巧な「プラモ」へと変化し、さらにはVHS/DVDという作品そのものの消費へと移る様子を表したいらしいということで。ササキバラ・ゴウ氏の言葉ではありませんのであしからず。